美容室でサイレントクレーマーが生じる背景と対応策
公開日:2024年2月1日
製品やサービスに対する不満を直接店舗に伝えないサイレントクレーマーの存在が注目を集めています。
「クレームではないなら良いのでは?」と思われるかもしれませんが、顧客の内なる声を放置するのは危険です。
ネット上での悪評につながり、店舗の評判が失墜する恐れがあるからです。自らサービスの改善点を把握できないことも痛いところ。
今回は、サイレントクレーマーとは何か、とくに美容室で増えている原因や背景、サイレントクレーマーを放置するデメリットについて解説します。
美容院の集客に悩まれている人に隠れた原因をお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
サイレントクレーマーとは
サイレントクレーマーとは、何も言わずに突如来店・利用しなくなる常連のお客さまを指す言葉です。心に秘めた不平や不満をお店に直接伝えず、負の感情を抱え込んだまま、別のサービスへと切り替えてしまいます。クレームを言葉に出さないのは「細かいと思われたくない」「手間がかかる」「伝えても改善しないだろう」との気持ちが根底にあるからです。
サイレントクレーマーは店舗にとって非常に厄介な存在。お客さまが抱える不平や不満を店舗側が知ることができなければ、改善の機会が得られず、為すすべなく顧客を失ってしまいます。お客さまと接するビジネスではサイレントクレーマーになり得る顧客を察知して、課題の解決のために策を講じる必要があります。美容室ではシャンプーの仕方やタオルの匂い、電話の取り方などの細かな部分は直接伝えづらく、サイレントクレーマーに発展することがあるのです。サービスに不満があっても実際に口に出すユーザーは非常に少なく、大半は心にしまい込むか、身内に愚痴を吐くなどでとどまります。割合でいうとクレームを直接店舗に伝えるのは全体の5%にも満たないとする調査結果もあるほどです。
美容室でサイレントクレーマーが増えている背景
美容業界はサイレントクレーマーの数が多いと言われています。
お客さまの身だしなみを左右する美容師は顧客との距離が近い仕事です。ゆえに人間関係でのトラブルを避けたいとの想いから、黙って我慢するという対応が増えます。直接的なクレームになりづらい理由や、簡単な対応策を解説します。
顧客情報や予約管理に漏れがある
美容室は顧客情報や予約の管理をフロントに置かれた1台のパソコンと紙で行う場合が少なくありません。予約表に入力する待ち時間が発生するため、混雑時は予約の抜け漏れが起きる危険が高いのです。
事前の電話を入れたのに予定日時に来院したら予約が入っていなかったら、不満を抱くのは当然です。「予約表を確認したのち折り返し連絡を入れさせていただきます」と言われるのも、すぐに時間が確定せずイライラを募らせる要因です。
待ち時間の長い、予約が取りにくいといった状況は、時間がないお客さまの感情を逆なでします。
混雑であることは理解できても、混雑時に雑に対応された、通常時と対応に差があると感じるとサービスに不信感をもたらす原因になり得ます。
予約対応が原因のサイレントクレーマーを察知するには、フィードバックの確認が有効です。店舗に「お客さまの声」ボックスやアンケート用紙があるなら、改善の要望が出ていないか確認してください。
接客スキルが低い
接客に不満を感じている場合も、お客さまは直接指摘できず、心を閉ざしてしまう傾向が見受けられます。人柄や人格にもかかわる内容のため、デリカシーも考慮して、ダイレクトに伝えるのははばかられるでしょう。
話題や伝達内容自体には問題がなくても、言い方や伝え方に問題があるとネガティブな感情につながります。たとえ施術には満足しても、馴れ馴れしい態度や雑な言葉遣いがあると顧客満足度が低くなります。
質問にきちんと答えない、会話が続かないなどスタッフの対応の冷たさに嫌気がさす場合もあるようです。接客には店員の対応だけでなく、美容室の設備や雰囲気も含まれます。
BGMの容量が大き過ぎたり、シャンプー台の座り心地が悪かったりすると不快指数が高まります。美容室のような長時間滞在する場所では空調への配慮も必要です。冷え性の人だと冬場以外にも、夏場にキンキンに冷えた冷房が原因で体調不良につながる恐れがあります。
接客が原因のサイレントクレーマーを事前につぶすには、カウンセリング時の会話や表情、しぐさなどの確認がおすすめです。
カウンセリング時や施術時に口数が少なく、相槌が適当だと感じた場合は、何らかの不平や不満を抱えている可能性があります。
同様の理由で、ポーズや表情から不安や緊張を感じていないか読み取りましょう。貧乏ゆすりや不自然な笑顔はリラックスできていない証拠かもしれないからです。
ただし個人の性格に起因するものかもしれないため、参考程度にとどめましょう。
スタイリングの技術が未熟
希望した髪型やカラーの色合いとかけ離れていると感じることで、サイレントクレーマーに発展する恐れがあります。出来栄えに直接不満を言うのは難しく、失望や不満を告げずに我慢してしまうのです。お客さまが想定していたサービス内容と異なると、クレームにつながります。
「後で自分でスタイリングすれば良いや」と感じるのも、直接伝えない要因です。
お客さまの仕上がりに対する満足度をチェックするには、鏡を見せて出来栄えを見てもらう際の表情や態度を見極めましょう。
お客さまは本当のこと、とりわけネガティブな内容は直接言わないので、美容師からの積極的な質問や確認が必要です。
見送り時には表情や姿勢、歩き方などもチェックしましょう。言葉に出せない感情も、態度から推測できる場合があります。
サイレントクレーマーを放置するとどうなる?
美容室にダイレクトに否定的な意見を伝えないサイレントクレーマーは、一見不利益がないようにみえます。しかし彼らが抱える不満を放置し続けると、企業に悪影響が生じます。
なぜなら、ネット上でクレームを言うことで悪評を世界中に拡散させるからです。また顧客の本音が汲み取れないため、サービスの欠点に気づけないことも大問題です。
ネット上でクレームを言われる
サイレントクレーマーは、直接言葉に出せないうっ憤をネット上で発散することがあります。口コミサイトやSNSで悪評が広まると、企業側に損失を生みます。
引っ越しして近隣で通える美容室を探している人が、美容室検索サイトで良いなと感じたお店を見つけたとしましょう。しかし口コミで悪評があったために来店を止めてしまうと、企業側にとっては新たな顧客を獲得する機会を逃してしまいます。
書き込む人数自体はごくわずかでも、書き込み先がレビューサイトのような口コミが残り続ける媒体だったり、投稿者がフォロワーを多数抱えるインフルエンサーだったりすると多大な損失を産む原因です。本来なら集客の有効な武器となり得る口コミサイトやSNSが、サイレントクレーマーの影響で逆に足かせとなるリスクを抱えています。
美容室としてもネット上のすべての悪評を確認して回るわけにもいかず、目が届かないところで拡散するネガティブな口コミに悩まされるのです。
自社サービスの欠点に気付くことができない
直接企業にクレームを伝えてくれれば、事態の改善が可能です。名誉挽回のチャンスを得られ、対応方法を間違えなければ不満を解消できます。しかしサイレントクレーマーの意見は直接吸い上げられず、美容院は自社が抱える問題に気づくことができません。
課題の把握が遅れれば、当然迅速な解決にはつながらず、さらに同じ不満を抱く顧客を生み出し続けるという最悪の事態に陥ります。クレーム処理とリピート率の相関関係を示した『グッドマンの法則』は、サイレントクレーマーによる脅威を如実に示しています。
この法則では苦情の処理(対応)に不満を抱いた顧客が発した非好意的な口コミは、サービスに満足した好意的な口コミと比べて2倍の影響があるようです。
自社サービスの欠点に気づけずに悪評につながると、質の高いサービスの提供に励んでいても、差し引きでマイナスです。
美容室のサイレントクレーマーへの対応策
美容室のサイレントクレーマーに対する有効な解決策を紹介します。表面化しない不平や不満は放置し続けると問題ですが、適切に対処すると店舗に対するイメージが向上します。
一度不満を抱いた顧客でも、迅速に問題を解決すればリピーターになるケースも珍しくありません。
サイレントクレーマーが抱くネガティブな感情を察知・認識する有効な対策は以下の3つです。
不満を生まないサービスの提供を徹底する
サービスに至らぬ部分があるから不平や不満につながるので、接客・スタイリング技術・設備の充実度など、すべての面で胸をはれる質の高いサービスの提供を目指しましょう。
具体的にはお客さまとのコミュニケーションの充実や、スタッフの教育・トレーニングなどが有効です。
顧客と密にやり取りを交わすことで、不平や不満を早期に察知し、クレームへの発展を防ぎます。積極的な声かけも重要ですが、言葉には出せないお客さまの感情を読み取る技術を身に着ける鍛錬も有効。
また、お客さまによって対応を変えず、常に同質のサービスを提供することも大切です。
すべての顧客が満足する完璧なサービスはありません。不満を生まないサービスの提供には、不平や不満を吸い上げ、改善を重ねる地道な努力が求められます。クレームを最初からゼロにするのは難しいですが、同じ過ちを繰り返さない、減らすことは可能です。
日々の経営で受け取ったお客さまの声をデータとして積み重ね、サロンごとに特化したマニュアルを作ることを推奨します。
美容室のサイトにお問い合わせフォームなどを設置する
サイレントクレーマー対策で有効なのは、お客さま自身が気軽にフィードバックできる体制を整えることです。対面の言いづらさが大きく関係しているため、非対面で率直な意見をぶつけられる仕組みを整えましょう。
HP上の問い合わせフォーム・FAQの設置や、問い合わせ窓口となるメールアドレスの提供、公式LINEの導入などが挙げられます。何よりも問い合わせまでのハードルを下げることがサイレントクレーマー対策のツボです。
サイトに専用コーナーを設ける場合、顧客が自分自身で問題解決を図れるように見やすい場所に設置することが重要です。また、気兼ねなく意見を投稿できるよう匿名性を確保しましょう。必要なのはメールアドレスのみで、氏名や住所の入力は求めないほうが良いかもしれません。受け取ったクレームには、迅速に返信・報告を行いましょう。勇気を出して伝えた不平や不満に対してリアクションを示すことで誠意を伝えられます。
お客さまから受け取った意見は極力サービスに反映するよう、努める必要があります。しかし、中には「無茶いわないでよ…」と感じるような無理難題を突きつけられる場合もあるでしょう。
美容室のクレーム対応は以下の記事にまとめたので、ぜひチェックしてください。
「美容室 クレーム対応」へのリンク
問い合わせには即レスを実施する
ネガティブな内容に限らず、お客さまからの問い合わせには迅速に対応するのが第一です。顧客のニーズを把握し、早急に対応策を講じることで大事に至らず前に不満を解消できます。
担当者や対応策を見つけるためにたらい回しにするのはご法度です。対応が遅れたことに腹を立て、関係性がこじれる危険があります。
クレームを受け取った際の連絡網を構築し、店舗ごとにマニュアル化しておけばスムーズな対応につながります
そもそも「不満を生まないサービス」とは?
不満を放置するからサイレントクレーマーによる被害が生じるので、ネガティブな部分が存在しないサービスを提供すれば良いといえます。
しかし、不満を生まないサービスとはどのように言語化すれば良いのでしょうか。美容室では高い技術力やていねいなコミュニケーションはもちろんですが、管理面の効率化や対応の即レス化も重要です。
お客さま一人ひとりの悩みは異なるので、多様なニーズを吸い上げ、顧客ごとにone to oneのサービスを提供するのが重要なのではないでしょうか。
まとめ
本記事ではサイレントクレーマーについて詳しく解説しました。顕在化しないお客さまの不満に対応するためには、お客さまの期待に応えるサービスを提供することに尽きるでしょう。そのためには、接客スキルやスタイリング技術を高める、予約などの顧客管理を徹底するなど、一つひとつ課題を解決していくことです。
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